識別問題でもよく出てくる「なむ」の識別。正直いってルールを覚えてしまえば簡単に攻略できるタイプの問題です。先に言っておくと「なむ」は4パターンしかなく、これさえ覚えてしまえばどんな問題でも倒せます。
この記事では高校生・受験生に絶対に覚えておいてほしい「なむ」の識別方法をマスターして、実際に練習問題で確認してもらいます。まだ覚えきれていなくて不安だという方は最後までぜひ読んでください。
「なむ」の識別は4パターンのみ
先ほども触れましたが、「なむ」の識別で必要なのは次の4つだけです。
①強意の助動詞+推量の助動詞
②他者への願望の終助詞
③強意の係助詞
➃ナ変+推量の助動詞
…と言われてもピンとこない人も多いと思いますので、それぞれの詳しい説明を見ていきましょう。
①強意の助動詞+推量の助動詞
強意の助動詞「ぬ」の未然形「な」と推量の助動詞「む」がくっついているケースです。見分け方は簡単で、「なむ」の上が連用形なら100%このパターン。ちなみに意味は「(きっと)~だろう」となり、「む」が意志で訳されて「(きっと)~するつもりだ」となる場合もあります。以下で例文をチェックしておきましょう。
例)船に乗りなむとす
→船に乗ろうとする
例)髪もいみじく長くなりなむ
→髪も大層長くなるだろう
上記の例はそれぞれ動詞の連用形「乗り」・「なり」に接続している「なむ」なので強意の助動詞+推量の助動詞です。上は「む」を意志で取っており、下では「む」を推量で取っています。文脈に応じて訳し分けが必要になるので注意しておいてください。
②他者への願望の終助詞
願望の終助詞「なむ」が出てくるのは上が未然形のときです。意味は「~してほしい、~してもらいたい」と相手に対する願望を表します。これも例文でチェックをしておきましょう。
例)いつしか梅咲かなむ
→早く梅が咲いてほしい
上記の例では四段動詞の未然形「咲か」に接続しているため、「なむ」は願望の終助詞です。先ほど相手に対する願望と説明しましたが、人だけではなく物に対しても使うことができます。
上で紹介した強意の助動詞+推量の助動詞のパターンとこの願望の終助詞のパターンの識別は特に登場頻度が高いので次の例文を暗記しておくと良いです。
例)花咲きなむ
→花が(きっと)咲くだろう
例)花咲かなむ
→花が咲いてほしい
僕もやっていますが大半の問題はこれさえ覚えておけば何も考えずに識別することができます。不安な方はまずこれを暗記してください。
③強意の係助詞
強意の係助詞「なむ」もあります。これは係り結びを作る係助詞(ぞ・なむ・や・か・こそ)で覚えたアイツです。見分け方は上が連体形・体言などであるとき係助詞の「なむ」だと思ってください。実は他の品詞にも接続してしまうので、「なむ」を抜いても意味が全く変わらないときが係助詞だと思っておいてください。これも例文で見ておきましょう。
例)その竹の中に、もと光る竹なむ一筋ありける
→その竹の中に根本が光る竹が一本あった
例)かかる仰せごとにつけても、かきくらす乱り心地になむ
→このようなご命令につけても、心が暗くなり取り乱した気持ちでございます
上の例文は先ほど説明した通り、体言「竹」に接続して「なむ」を抜いても意味が全く変わらないため、強意の係助詞と判別できます。
難しいのは下の方で、「なむ」で終わっていますがこれは結びの省略が起きています。本来は「なむ侍る」と続くはずですがそれが省略されて分かりにくくなっています。結びの省略についてはまた別記事で解説するので不安な方はそちらも参考にしてください。
➃ナ変+推量の助動詞
最後がナ変と推量の助動詞「む」がくっついたケースです。これはナ変動詞を完璧に覚えておけばOK。ナ変は「死ぬ・往ぬ(去ぬ)」しかないのでまだ覚えていない人はここで暗記してください。一応例文で確認しておきましょう。
例)願わくは花の下にて春死なむ
→願うことには桜花の下で春に死にたいものだ
一点注意点を挙げるとすれば「む」の訳を文脈に応じて変える必要はあります。ただ、上に「死ぬ」・「往ぬ(去ぬ)」があれば簡単に見分けることができるので識別自体は超楽です。
「なむ」の識別のルール
今まで学習してきたことをまとめると上のような公式になります。これを頭に入れておけばほとんどの識別問題で困ることはなくなるはず。ただ、未然形と連用形が同じ形のときなどは意味からも考える必要があります。
また先ほども紹介しましたが、係助詞の「なむ」に関しては結びの省略がおきて見慣れない形になって出てくるので要注意。改めて自分なりにノートにまとめてみると良いと思います。
「なむ」の識別の練習問題
最後に今まで学習してきたことを使って識別の問題に挑戦してみましょう。もし間違えてしまった場合は識別法を絶対に見返して復習してください。
識別問題
問:次の傍線部の文法的説明を下の選択肢から選べ。
①:これを見出したりけるとなむ
②:子といふもの、なくてありなむ
③:梅の花とく咲かなむ
➃:日は暮れなむ
⑤:かかる別れせむなむありける
1…強意の助動詞「ぬ」+推量の助動詞「む」
2…係助詞「なむ」
3…願望の終助詞「なむ」
4…ナ変動詞の活用語尾+推量の助動詞「む」
解答
①:正解は2の係助詞。後ろに「言いける」などが省略されている。
②:正解は1。「あり」は連用形。今回は推量の「む」が適当・勧誘の意味で、「子供はきっとない方がいい」という意味。
③:正解は3。「咲か」は未然形なので願望の終助詞。
➃:正解は1。分かりにくいが「暮れ」は下二段活用動詞「暮る」の連用形。
⑤:正解は2。「なむ」を省略しても全く意味は変わらず係助詞と分かる。
まとめ
古文において「なむ」の識別はかなり簡単で、入試でも絶対に得点したい問題です。まずは次の公式を押さえておくこと。
識別の問題はとにかく数をこなすのが大事なので、手元の参考書も使って定着させていきましょう。古文の勉強方法がそもそも不安だという人は次の記事も参考にしてみてください。
コメント