古文の読解をしているとよく出てくる「前世からの因縁」や「宿縁」という言葉。
「みんな当然分かりますよね?」と普通の顔をして解説にも書かれていたりしますが、これってどういうことなのか分かりにくいですよね。
実は、この言葉をしっかり理解していると古文の背景知識が良く分かります。一体どういうことなのか一緒に勉強していきましょう。
前世からの因縁・宿縁とは
まず簡単に「前世からの因縁」や「宿縁」の意味をおさえておきましょう。この言葉は例えば「契り」という古文単語の現代語訳として登場します。
「契り」
①約束。男女の間の恋の約束をも言う。
②前世からの因縁。宿縁。因縁。
(出典:学研全訳古語辞典)
めちゃくちゃ簡単に言うと、前世での行いが今に影響を及ぼしているということです。でもまだよくわからないですよね。もう少し掘り下げてみていきましょう。
仏教の輪廻思想を理解する必要がある
この「前世からの因縁」や「宿縁」という考え方は日本人なら何となく日々の中で触れているので理解の下地はあると思いますが、仏教の考え方に由来します。
仏教では六道輪廻という考え方があります。六道とは天道・人間道・修羅道・畜生道・餓鬼道・地獄道という迷いの世界のことで、人間を含めた生きとし生けるものは死ぬと自分の行いに応じた世界に生まれ変わります。その生まれ変わりが無限に続くことを輪廻と言います。
ちなみに、仏は悟りを開きこの無限ループの苦しみから抜け出した(=解脱した)存在のことです。仏教を信じている人はこの世界観のもと、死後地獄などの苦しい世界に行くことを恐れ、輪廻から抜け出そうと修行しているのです。
※中二病くさいと思うかもしれませんが、古文の人たちはまじめにこの世界観で生きているので考え方を知っておくのは超大事です。
すこし話が逸れましたが、要するに古文の人たちは生まれ変わりを信じているのです。そして前世(今の自分が生まれるまえの自分)の行動が現生の自分に影響を与えていると解釈しています。この点については次の言葉に集約されているでしょう。
袖振り合うも他生の縁の意味
おそらく日本人ならどこかで耳にしたことがあると思いますが、「袖振り合うも他生の縁」という言葉があります。これは袖が振れあうこともちょっとした縁ですという意味ではなく先ほど説明した仏教思想を端的に表した言葉です。
「多生」というのは「何度も生まれ変わりをしている」という意味。そして「袖振り合うも他生の縁」というのは、生まれ変わりを経験していく中で少しでも自分と縁があった人でなければ袖が触れ合うことすら起こらないという意味です。
袖が触れ合うという些細なことですら前世からの宿縁が必要になるのですから、古文の登場人物たちは何か良いことや悪いことが起こったときに、それは前世からの影響があるんだと自然に考えているのです。
これは宗教的な考え方なので受け入れらない、信じられないという方もいるかもしれませんが古文の人たちはそういう「設定」の中で生きていたということは年頭においておいてください。
まとめ
「前世からの因縁」や「宿縁」という言葉は前世からの影響を受けているという意味です。これは古文の登場人物たちが仏教の思想を受け入れていたから出てくる考え方です。
仏教の思想はとてもまとめられるものではないのですが、めちゃくちゃ簡単に言うと六道輪廻の思想です。この無限ループの中で経験したことが今の自分にも影響を与えていると昔の人は思っています。
「袖が触れ合うも多生の縁」という言葉も覚えておきましょう。袖が触れ合うことですら前世の因縁が必要ですから、例えば親子になったということはものすごい強い縁があったという風に解釈をしているということです。
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