古文の文法問題の中でも助動詞「に」の識別問題は結構難しいと感じます。
というのも、パターンがかなり多いからです。後ほど詳しくは紹介しますが全部で5パターンを知っておく必要があり、結構覚えるのが大変です。
今回は僕が識別をしている上でポイントだと思ったり、生徒たちが間違いやすい部分を重点的にお伝えしていきます。「に」の見分け方が不安な人はぜひ最後まで読み進めてください。
大学受験に出る「に」の識別は限られている
まず、「に」の識別で問題になるのは次の5種類です。
①:完了の助動詞「ぬ」の連用形
②:断定の助動詞「なり」の連用形
③:格助詞
④:接続助詞
⑤:形容動詞のナリ活用活用語尾
特に難しいポイントは②・③・④を見分ける方法だと思います。
というのも、②断定の助動詞「なり」は体言または連体形に接続しますが、③の格助詞は体言に、④の接続助詞は連体形にそれぞれ接続してしまうので、形の上では見分けることができないのです。
こう聞くと不安になりますよね。でも、大丈夫です。上から順に分かりやすく解説していくので、しっかりと付いてきてください。
「に」の識別方法について
①:完了の助動詞「ぬ」の連用形
この見分け方は結構簡単で、「に」が連用形に接続しているかどうかを見抜くだけです。例えば次の例文を見てみましょう。
例)腰もかがまり目もただれにけり
→腰も曲がって、目もただれてしまった。
ここでは下二段活用の動詞「ただる」が連用形「ただれ」になっています。連用形の後ろにくっついているのでこの「に」は自動的に完了の助動詞「ぬ」の連用形と判別することができます。
また、「にけり」・「にき」と過去の助動詞を下に伴うとき「に」は完了の意味になります。同様に「にたり」と後ろに存続完了の「たり」を伴うときも「に」は完了の意味なので合わせて覚えておきましょう。
②:断定の助動詞「なり」の連用形
断定の助動詞かどうかを見分けるのは先述の通り混乱しがちなポイントですが、まずはルールを1つだけ覚えておけばOK。
それは、連体形もしくは体言の後に「に」+「あり」という形があるとき、この「に」は断定の「なり」の連用形だということです。例えば次の例文で確認してみましょう。
例)こと心ありてかかるにやあらむ…
→浮気心があってこのようにするのだろうか。
この文の構造を解説すると、体言「かかる」+「に」+係助詞「や」+ラ変動詞未然形「あら」という風になっています。
間に係助詞が入っていますが体言+「に」+「あり」という形になっているのでこの「に」は断定の助動詞「なり」の連用形だと分かります。このように係助詞が間に挟まることも多いので注意しておきましょう。
>>【古文】「なり」の識別方法まとめ!伝聞推定と断定どっち?
発展:断定の助動詞の場合は注意点もある
また、「に」が断定の助動詞「なり」の場合気を付けないといけないことがあります。次の2つの例文をそれぞれ確認してください。
例)おのが身はこの国の人にもあらず
→私はこの国の人ではない。
例)空也聖人の建て給へりけるとも申し侍るにや。
→空也聖人がお建てにになったとも申しますのでしょうか。
まず、1つ目の例文で確認したいのは「に」と「あり」の間に「も」というのが挟まっているという点です。実はこの「も」は係助詞です。
係助詞と言うと「ぞ・なむ・や・か・こそ」を覚えていると思いますが「は・も」という係り結びを作らない係助詞もあるので知っておきましょう。
次に、2つ目の文ではそもそも「あり」というのが書かれていないですよね。
これは「結びの省略」というもので本来あるはずだった「あらむ」が省略されているのです。これは普段から意識していないとスルーしてしまうところなので文末が「にや」・「にか」で終わっているときは「あらむ」を自分で補って読む癖をつけておいてください。
③:格助詞
格助詞の「に」は体言に接続して現代語と同じように「~に」と訳すことができます。ただし上で紹介したように体言に接続していても断定の助動詞という場合もあるので気を付けてください。念のため例文を見ておきましょう。
例)行き行きて、駿河の国にいたりぬ
→どんどん進んでいって駿河の国に着いた。
体言である「国」に接続していて、「~に」と訳してOKなので格助詞と判断してくれれば大丈夫です。
④:接続助詞
接続助詞の「に」は連体形に接続して逆接や順接、単純接続など文脈に応じて訳し方が変わってしまいます。接続助詞の場合は下が「に、」となり文章が続く場合がほとんどということも覚えておくと判別が容易になると思います。
例)よろこびて待つに、たびたび過ぎぬれば
→(女は)喜んで男を待っていたが、その度ごとに通りすぎてしまったので
ここでも「に、」の形になって後ろに文章が続いていますよね。英語で言うところのandやbutみたいなものだとイメージしておきましょう。ちなみに、接続助詞の「に」の後は主語が変わりやすいということも古文では必須の知識です。
>【古文】主語が変わるタイミングや目印を紹介。ポイントは助詞にある!
⑤:形容動詞のナリ活用活用語尾
最後に「に」が形容動詞のナリ活用の一部として出てくるケースです。こちらは正直いって形容動詞の活用をしっかり覚えておけば大丈夫でしょう。
例)僧坊どもあらはに見下ろさるる
→僧侶たちの住まいが丸見えに見下ろされる。
このように出てきたときに「あらはに」が形容動詞「あらはなり」に連用形だと判別できればOKです。ちなみに形容動詞は下に動詞を伴う場合に「~に」という形になります。
まとめ
今回はかなり詳しく「に」の識別についてお伝えしてきました。
一番混同してしまう②:断定の助動詞「なり」の連用形、③:格助詞、④:接続助詞は例文なども一緒にノートにまとめておくと良いです。ただ接続だけで判断すると痛い目を見ることになります。
今回はかなり細かいところまで解説しているので、もう一度この記事を読み返して自分の中に落とし込むようにしてください。
といってもこれ以上の問題は入試でも出ないと思いますので、まだ知識があやふやだという人は何度も読み返してしっかり落とし込んでください。古文の文法問題は識別が勝負です。
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