古文において助動詞に次いで大事なのが助詞。ですが助動詞でもういっぱいいっぱいで助詞まで手が回っていないという方も多いと思います。そんな方にも知っておいてほしいのがとてもよく出てくる「格助詞」です。
その中でも代表的な「が」と「の」を見分ける方法について分かりやすく解説をしていきます。不安な人はぜひ最後まで読んで疑問点を解消していってください。
格助詞の「が」と「の」は何が違うの?
まとめて解説されることが多い格助詞の「が」と「の」ですがもちろん違いもあります。簡単に言うと格助詞「の」には「が」には無い意味も含まれているということです。次の図にまとめたので参考にしてください。
ここで示したように「が」には連用修飾格と呼ばれる働きがありません。それも踏まえて以下で詳しく意味と見分け方を解説していきます。
格助詞「が」と「の」の意味と見分け方
先ほども確認した通り、「が」と「の」が持つ意味は大きく5つの「格」に分けられます。この「格」というのは聞き慣れないと思いますが、どういう資格=はたらきを持っているかというものだと思ってください。詳しく見ていきましょう。
①:主格
「主格」はその名前の通り主語の働きをしていることを示すものです。現代語で言うと「彼が話した」という時の「が」のようなものです。古文の主格の場合は現代語に訳したときに「~が」と訳せると覚えておきましょう。以下はその例文です。
・雀の子を犬君(いぬき)が逃がしつる
→雀の子供を犬君(人の名)が逃がしてしまった。
・この中の主とおぼしき僧の追ひ来て
→この中の主人と思われる僧侶が追ってきて
このように「~が」と訳せる場合は主格と判断するようにしてください。現代語と同じ感覚なのであまり迷うことはないと思います。
②:同格
「同格」というのは前と後ろの部分が同じものを指しているということを表しています。現代語に訳すとき「~で」と訳せるケースです。また、同格の場合は体言や連体形に接続し、下は連体形が続くという特徴も覚えておきましょう。
・いとやむごとなききはにはあらぬが、すぐれて時めき給ふありけり
→それほど高貴な身分ではない人でとりわけ帝の寵愛を受けられている方がいた。
・大きなる柿の木の、実ならぬあり
→大きな柿の木で実がならないものがある
上記の例のような形を見てピンとくるように慣れていきましょう。特に同格の場合はうまく訳しにくい場合が多いので重点的に勉強しておきたいです。
③:準体格
「準体格」というのは体言=名詞に近い働きをしているという意味です。体言の代用とも呼ばれたりします。現代語訳したときに「~のもの」と訳せる場合だと覚えておきましょう。以下の例文でも確認しておきましょう。
・この歌は柿本人麻呂がなり
→この歌は柿本人麻呂のものである
・まことにかばかりのは見えざりつ
→本当にこれほどのものは見たことがなかった
個人的には準体格の訳し方も慣れてくれば問題はないかと思います。明らかに後ろとの続き方がおかしい場合に準体格を疑うという意識を持っておきましょう。
④:連体修飾格
「連体修飾格」というのは体言を修飾=説明する働きをしているパターンです。現代語では「~の」と訳せるケースでこちらも見分けるのは容易だと思います。
・枝もたわわになりたるがまはりを
→枝もたわわに実がなっている木の周りを
・僧正の御歌になむありける
→僧正の御歌であった
このように現代語の感覚ともズレがないので違和感なく訳すことができると思います。
⑤:連用修飾格
最後は「連用修飾格」でこちらは用言を修飾し、「の」にしかその用法がないということに注意しましょう。現代語に訳すと「~のように」と訳すことができます。
・例の集まりぬ
→いつものように集まった
・あしひきの山鳥の尾のしだり尾の長々し夜
→山鳥の尾の垂れているよう尾のように長い夜
「例の」はもう慣用句として「いつものように」と押さえておくのがいいです。出てくるときは少ない用法ですが出てきたら差が出る問題なのでしっかりと覚えておいてください。
格助詞「が」と「の」のまとめ
今まで紹介してきた意味をまとめると次のように整理することができます。
それぞれの見分け方をしっかりと公式化して頭に入れておきましょう。見分け方を覚えたら次の練習問題に進んでください。
格助詞「が」・「の」を見分ける練習問題
練習問題
問:次の太字部分の意味を後の選択肢①~➄から答えなさい。
(1):仁和寺の法師
(2):妻があからさまに立ち出でたる
(3):かばかりのはみえざりつ
(4):翁の白髪白きが、枕上に居て
(5):紫草のにほへる妹を憎くあらば 人妻ゆゑに我恋ひめやも
選択肢:①主格・②同格・③準体格・④連体修飾格・⑤連用修飾格
解答
(1)の正解は④。「~の」と訳せる。
(2)の正解は①。「~が」と訳せる。
(3)の正解は③。「~のもの」と訳せる。「これほどのものは見えなかった」
(4)の正解は②。「~で」と訳せる。「翁で白髪が真っ白な人が枕上にいて」
(5)の正解は⑤。「~のように」と訳せる。「紫草のように美しく映えているあなたを憎らしく思うのならば、人妻なのにどうしてあなたのことを恋い慕いましょうか。」
まとめ
助詞の学習は後回しにされやすいですが格助詞はしっかりと覚えてほしいところ。今回紹介した見分け方をマスターすればこれ以上難しい問題は出てこないので確実におさえていきましょう。
コメント