世の中には「文系は廃止すべきだ、みんな理系になれ!」という全人類理系計画(文系不要論)を唱えている人がいます。
そこまで極端ではないにせよ、理系>>>越えられない壁>>>文系と考えている方はあなたの身の回りにも結構いるのではないでしょうか。
僕自身は京都大学法学部というバリバリの文系出身者ですが、文系がオワコンであったり意味がないとは全く考えていません。
今回はこの問題についてちょっと真面目に考えてみました。大学入試の現代文のテーマとしても出るので興味がある人は最後まで読んでみてください。
文系がオワコンという風潮
まず、文系がオワコンと呼ばれる風潮について考えてみましょう。
「オワコン」というのは「終わったコンテンツ」ということで、もはや意味がないものになっているという意味。これについては、就職が大きな指標となっている気がします。
事実、理系の学生は自分たちが学んできた専門技能や知識を活かして就職しているケースが多いです。例えば、僕の友人は大学では化学を学んでいましたがそのまま水道関連の企業に就職し自分の知識を活かしていました。
その一方で文系は学んだことを活かして就職するケースが少なく、企業に入ってからOJT(on the job training)で全く一から仕事を身に付けていくということがザラです。
このように、理系=学んだことを活かせる・手に職がある=就職先がある、文系はそれがないため就職先がないというようなイメージを持たれているのだと思います。
文系・理系の就職率や年収の実際は?
ただ、あくまで上記で説明したのはイメージにすぎません。データをもとにして実際のところを見てみましょう。
これは文部科学省が出している「令和3年度卒業予定者の就職状況調査」で、このデータを見ると大卒の文系の就職率は95.4%、理系の就職率は97.4%と実は大きく離れていないことが分かります。
この調査は6,250人に対して行なわれていますが、具体的にどの学校で行われたのかは不明。なので学校のいわゆるランクによって就職率にどれだけの影響があるかは考慮されていないことには注意してください。
また、年収について文系・理系の違いを見てみると次のような傾向があります。
回答の母数が不明瞭ですが、全体として理系の方が文系よりも年収が若干高いという傾向は確かにあります。
ただ、平均は理系職が593.5万円、文系職が558.1万となっており、ボリュームゾーンである年収400万~699万ではほぼ文系・理系の差はなさそうです。それ以上の年収を目指すなら理系ということになるのかもしれませんが、個人的には流布しているイメージほど2つの間に格差はないように感じました。
このように考えてくると、就職率や年収の面から文系がオワコンということは簡単に言うことはできず、文系・理系を問わず社会で必要されていると言えるでしょう。
文系は頭が悪い?
「文系は頭が悪い」というのもよく耳にする発言です。特に私立文系が槍玉にあげられて批判されていることが多いように感じますが、なぜなのでしょうか。
それは私立文系受験で必要な科目が関係していると思われます。一般的に私立文系で必要とされる科目は国語(現代文・古文)・英語・地歴公民であり、理系よりも圧倒的に勉強量が少ないと考えられています。
まず国語は現代文は勉強しなくても日本人ならそこそこどうにかなってしまうと思われています。それ以外の科目は古文にしろ、社会にしろとにかく暗記していれば点数が取れるので、文系=地頭が悪いけど暗記で乗り切るというイメージが付いて回っているのだと思います。
実際はそんなに単純なことではなく、有名私大なら国語の勉強もきっちりやっていないといけませんし、社会も用語暗記だけではなく記述力を求められたりもしますが、文系は数学ができない・数学や理科から逃げたという風なイメージが全体として強いのが事実です。
僕は国公立受験だったのでそんな風には言われませんでしたが、周りの友人の中には明らかに私大文系を見下す人もいました。
もしそんな人があなたの周りにいるなら完全に無視して、塾や予備校に通ったり、スタディサプリなどのオンラインサービスを使って勉強して圧倒的な結果を出して見返すのがいいです。
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文系学問が役に立たないというイメージも
さらに、文系=頭が悪いという印象から発展して文系の学問は実用的ではない=社会の役に立たないということで批判されるケースも多いです。理系は新技術の開発に貢献しており、それが人類全体の幸福に寄与するが文系はそうではないという論調ですね。
確かに文系は理系のように現在起こっている問題に対して、技術革新を持って対処することはできません。ですが、それをもって文系は役に立たないというレッテルを張ってしまうのは、文系の知と理系の知の在り方が違うということを無視した議論だと思います。
簡単に説明すると理系の知は所与の目的を遂行することを目指した目的遂行型の知である一方で、文系の知は目的そのものを設計・想像する価値創造型の知であると言えます。
たとえば、今話題のAIを作るのは理系型の知の出番ですが、そのAIをどう活用するかを多方面から考える際に活躍するのは文系型の知ということです。教育の面でAIをどう取り入れるか、法律でどのような規制をするのかなど、AIが社会の中でどのように活用されるべきかを探っていくのが文系の役割であり責任だと言えます。
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このように考えると文系=役立たずのオワコン・勉強ができない、理系=社会に貢献するエリートという風に結論付けてしまうのも早計ではないでしょうか。僕たちも世間的なイメージで判断してしまいがちですが、多様な視点を持つべきだと思います。
まとめ
文系がオワコンであったり、頭が悪いというイメージは確かにありますが、就職率や年収、社会への貢献の仕方というのを検討しても決定的な証拠はありません。
特に最後に検討した知の在り方という視点では文系と理系のどちらが優れているということではなく、両者が手を取り合うことでより良い社会を実現できる可能性があるのだと僕は思います。
ただ、イメージにとらわれたり文系と理系の特徴を見誤ったりしていては前進することは難しいでしょう。まずは僕たちひとりひとりが文系と理系の性質を冷静に把握することが大事ですね。
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